臭いおならでおなじみクロストリジウム属と自閉症

私がなかなかの衝撃を受けた腸脳相関の事例をご紹介します。「腸と脳が相関関係にある」というのがイマイチ腑に落ちない方に読んでいただければうれしいです。

 

『あなたの体は9割が細菌』(アランナ・コリン著 矢野真千子訳)を参考にお話しさせて頂きます。

エレン・ボルト氏の息子アンドルーの事例

自閉症の息子(アンドルー君)をもつ母親エレン・ボルトさんの事例をご紹介します。

 

彼女は医者でも科学者でもなく、コンピュータープログラマーでした。ただ、職業柄、原因を探す探究心と「まず観察からはじめよ」という基本を知っていました。

当時自閉症は遺伝が原因だと思われていたので有効な治療法がありませんでしたが、エレンは徹底的に調べました。

 

私は息子を観察し、何が息子をそんなふうに振る舞わせているのかを考えました。あの子が私の作った食事に手をつけず、暖炉の灰やティッシュペーパーを食べるのはなぜなのか。ちょっと触れられたり大きな音がしたりするだけで悲痛な叫び声を上げるのはなぜなのか。徹底的に観察しました。(『あなたの体は9割が細菌』アランナ・コリン著 矢野真千子訳 104ページより引用)

 

その結果、抗生物質の治療後に一部の人に長期的に重度の下痢が出現するクロストリジウム・ディフィシル感染症についての研究論文にたどり着きます。

「息子は破傷風菌(クロストリジウム属のひとつ)に感染しているのではないか?」

そう思った彼女は次のような仮説を立てます。

  • アンドルーの耳の治療に使われた抗生物質によって彼はクロストリジウム・ディフィシル感染症を引き起こす細菌のひとつ破傷風菌に感染しているのではないか
  • 通常筋肉に感染する破傷風菌がアンドルーの場合は腸に入ったのではないか
  • 通常ならば破傷風菌の定着を阻止する細菌が、耳の治療に使われた抗生物質によって殺されていることにより腸内に定着しているのではないか
  • その破傷風菌が産生した神経毒素が何らかの形でアンドルーの脳に到達し異常行動を発現させているのではないか

どっかのタイミングで射ったワクチンに元気な破傷風菌が入っていたとかだったりして

グラフに収まらないほど高かった抗体値

事実、アンドルーの血液を調べたところ、破傷風菌に対する抗体値がグラフに収まらないほどに高かったことがわかりました。

たしかに破傷風菌の予防接種は受けていましたが、予防接種を受けたぐらいでは出るはずのないレベルだったのです。

対破傷風菌のバンコマイシンを投与した結果

エレンは訝しがる医者に頼み込んでアンドルーにバンコマイシンを投与してもらうことにしました。

その結果、2日目までは異常行動が激しくなったものの、それを過ぎると驚くほどに多動が落ち着き、2週目にはトイレ訓練を始められるまで回復したのでした。

つまり腸内細菌は脳(心)に影響を及ぼし得る

この事例をみても、メンタルのコンディションが腸内環境と無関係である、と考えるのはかえって不自然だと思います。

 

よって、今現在うつ状態だったりネガティブな状態にある人は、腸内環境を疑ってみてほしいと思うのです。

腸内環境を整えることにはメリットしかないので、まずは身近なものからやってみるといいと思います。

 

以前に書いたこれらの記事が参考になればうれしいです。

自閉症児にはクロストリジウム属の細菌が多い

太った人にはフィルミクテス門、痩せた人にはバクテロイデース門の腸内細菌が多いというのは有名な話ですが、実は自閉症にもある特定属の腸内細菌が多いというデータがあります。

クロストリジウム属です。

自閉症児にはこのクロストリジウム属(嫌気性細菌)の細菌が10倍近く多いことがわかっています。

クロストリジウム属のはたらき

クロストリジウム属の細菌はタフなものが多く、酸素や熱や酸に触れても芽胞を作って生き延びることができます。

 

クロストリジウム属はタンパク質を代謝して硫化水素(アンモニア(、インドール、クレゾール(スカトール(などを生産しますが、どれも悪臭の原因になる物質です。

腸内でクロストリジウム属が優勢になると、これらが毛細血管から血液に乗って全身をめぐるわけです。これで何も不具合が起こらないはずがありません。

 

だからといって悪玉菌と呼ぶのは短絡的だと思います。何事もバランスです。

たしかに臭いおならは嫌だけども

これだけタフなスペックなのは“何か”あります。

調べてみると、クロストリジウム属は免疫が働きすぎないようにブレーキをかけたり、腸炎を抑制する働きをしていることがわかりました。

おわりに

脳以外の臓器がおかしくなれば、私たちは外部の原因を考える。ところが脳(心)がおかしくなったときは、本人か、親か、生活習慣のせいにされる。(『あなたの体は9割が細菌』アランナ・コリン著 矢野真千子訳 113ページ)

 

私はこの本以外にも複数の腸内環境に関する本や論文を読みますが、うつ病などメンタルにあらわれる異常は、一種の炎症であると考えています。

長年うつ状態で陰鬱とした日々を過ごしていた私は、この「炎症の可能性大」という情報にかなり救われました。なんていうかすごく楽になったのです。

炎症なら原因と対処法があるので。

 

逆にこれが呪いとか悪霊とかの類が原因だった場合、どうしていいかわからないので絶望するしかありません。

私も序盤はずっとその角度から検証し、何年も解決策を模索していましたが、結局解決には至らず毎度毎度見事に絶望しました。あとすごいお金がかかりました。

もちろんスピリチュアルを否定するわけではありません。私の探し方が悪かっただけなのかもしれませんし、それで救われたという人もいらっしゃるかもしれませんが、少なくとも私には効果的ではありませんでした。

 

 

以上です。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

<あとがき①>

NHKスペシャル「人体」 万病撃退!“腸”が免疫の鍵だった

ところで、N◯Kが2018年に「現代病の多くは免疫の暴走が原因!クロストリジウム属の腸内細菌を増やそう!」とか報道しちゃってますね……

 

クロストリジウム属を増やそう

マスクしよう

除菌しよう……

 

全部免疫を下げるんですけど、たぶん偶然ですね。

いや免疫が暴走しているんじゃなくて、腸から漏れ出した物質やらで実際に炎症が起きまくってて、体はそれにちゃんと対応しているだけだと思うのですが……

 

<あとがき②>

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